熱中時代

先月までは中2の息子と、ほぼ一緒に風呂に入っていた。

が、日向もだいぶ大きくなり、俺と一緒に浴槽に入るのは、かなり難しくなっていたのは事実だが、それでも俺は一緒に入りたかった。

唯一、男と男の時間だったからだ。

日向におそるおそる「1人では入りたかろう?」と聞いたら、「うん」と言ったので、諦めた。娘を嫁に撮られた気分だ。

これでまともに話が出来るのは夕食の時間だけになってしまった。

俺は外では「褒め上手」として有名だが、日向を特別に褒めることは全くない。

せいぜい「がんばったね」くらいだ。

「勉強しなさい」とだけは口が裂けても言わないと決意している。

成績に関しては、「テニスもテストも、勝負事は絶対に勝たなければいけない」とはよく言う。

テストの点数なんてどうでもいい。

でももし、悪い点数を悔しかったと思うなら、次には絶対100点を取ってやる、という気概は持って欲しい。

俺の方からテストのことを話すことはないのだが、昨日、なんとなくふと思い出したことをつい言ってしまった。

「この間のテスト、国語は学年でトップだったんだろう?」

「うん。みんなから、どうやったら国語でそんな高得点が取れるのかと、不思議そうに聞かれる」

と言っていた。

日向は、宿題以外、一切勉強しない。

国語の点数だけがずば抜けて良いのは、ただ「読書が好き」だからだ。

たしかゼロ歳の時から、嫁が読み聞かせをしていたはずだ。

日向にとって、本は空気を吸うのと同じくらい、普通のことであった。

熱中したのは読書だけだった。

今はiPodで動画に熱中している。

青春時代は何かに熱中することが一番大事だ。

それだけでいい。

俺は今、空手やオーディオに熱中している。

だから今も、青春時代を生きている。

青春時代とは「熱中時代」なのだ。

でもこんなことを話しても、日向は「ふーん」で終わってしまう。

まあ、わからないものは、わからないな。

小学校のミニバスケ部、お別れ試合の日の写真。